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Project/

MATSUMOTO Architecture Art Festival 2022

Air(Gen-bin),194x74cm,2022.jpg

この作品はマツモト建築芸術祭(2022,1/25-2/20)

に出品するために作られたものだ。

私に与えられた空間は、かつてフランスから日本に布教に来た司祭たちの住処として1889年に建てられた旧司祭館、その一階にあるガラスで覆われた長いベランダ奥の壁だ。薄青色と薄緑の軽やかでどこか優美な小さな旧司祭館の中にあるその空間には、高い天井から繊細で美しいクラシックなランプが吊るされている。その空間には、初め、人間の一生の始まりと終わりのメタファーとなる一条の光のみを描いた絵画こそがふさわしいと考えた。しかし、よく考えてみると、光のイメージはこの場所には馴染みすぎる様に思えた。

やがて、光が現れる刹那ではなく、光が現れる以前の混沌とした世界を描くという着想を考えた。光が現れる前とは、つまり神がまだ光あれという以前の世界のことだ。老子は、その様な光が現れる以前、つまり、天と地、人間と自然、主と客、あらゆる二項対立が現れる以前の名もなき世界を「玄牝(げんびん)」と呼んだ。

主客未分以前の世界、タイムレスな風景を表現することで、そこから現代を見直し、危機に瀕している私たちの文明や人間の立ち位置を見直すことに繋がれば面白いのではないかと考えたのだ。

私は8年ほど前に見たイタリアとスイスの国境あたりの風景を思った。それは冬に車で通った通った時に見た雪の残った荒々しい崖の風景だったのだが、雪に覆われながら岩肌が剥き出しになった未だ名もなき原始的なその光景を目の当たりにした時、まるで別の惑星に降り立った様な時間の喪失とでもいうような感覚に陥った。具体的な色や形状がありながら、しかし同時に渾沌の中で万物が流動しながら、未だ形にならない何かが隆起していく様な生成のプロセスそのものとでも言うべき風景。あちこちには聳え立つ崖の中央部に、かつて瀧が流れていたかのような

くぼみのある、まさに天下の谷とでもいうような風景が広がっていた。

私はアトリエで縦長の画面を用意し、その崖の風景を描こうと考えた時、ふと13Cの那智瀧図を思った。那智瀧図は作者不明で謎が多い絵画だが、縦長の画面にご神託としての瀧を描いたものであることは周知の事実である。

私は、その瀧が不在の岩場だけのシーンを描くことで(ニーチェに倣って言うならまさに神が不在の世界を表現することで)、そこにかつて流れていた、あるいは人類が滅びた後にやがて流れるかもしれない瀧を想像する、いわば不在の在とでもいうべき風景を描くことで、様々なことを示唆できるのではないかと考えた。

風景の問題とは、我々は何処から来て、何者で、どこへ向かって行くのかという存在論の問題なのだと思う。我々とこの世界の関係そのものを問う、それがアートなのではないかと考えている。

Air(Genbin) , 2022, 雲肌和紙に岩絵具,胡粉,194x97cm

Air(Gen-bin),194x74cm,2022   Instaration view at  MATSUMOTO Architecture + Art Festival 2022

Air(Gen-bin),194x74cm,2022  / Instaration view at  MATSUMOTO Architecture + Art Festival 2022

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Air series #1,2,3,4 Matsushima 2021.tif

Air series #1,2,3,4/2021/   Instaration view at  residence Matsushima

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Air (130,3x162cm)2021 MoriBuild _ Ref. 2021067 .jpg
IMG_1653_edited.jpg

Air/130,3x162cm/2021   Instaration view at  residence Tokyo

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Eclipse/228x291.2/2018/Platinum leaves and natural pigments folding screen

/Instaration view at KenzoTakada's residence Paris

Sho-rin-zu/2015      Collaboration with Maison Doging

Shadosws/2013/Instaration view at KenzoTakada's residence Paris

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